出雲国風土記・現代語訳:スサノオのヤマタノオロチ退治(日本書紀 異伝版)

『日本書紀』の異伝における出雲神話「スサノオのヤマタノオロチ退治」を紹介します。原文だと分かり辛いので、やや加筆修正しています。


スサノオのヤマタノオロチ退治(日本書紀 異伝版)


神々の時代、高天原(たかまがはら)で悪行の数々を働いたスサノオは、その罪を以って高天原を追放されました。

そして、子のイタケルを連れて新羅国(しらぎのくに)に天降り、曾尸茂梨(そしもり)に辿り着きました。

そこでスサノオは「私は この土地に居たくはない。」と言い、土で船を造って東を目指して旅立ちました。

その後、出雲の簸之川(ひのかわ)に辿り着き、その川上の鳥上之峯(とりかみのみね)に降り立ちました。

その土地には、人々を飲み込む大蛇(おろち)が棲んでいたため、スサノオは天蠅斫之劒(あめのははきりのつるぎ)で大蛇を斬り倒しました。

すると、大蛇の尾を斬った時に刃が欠けてしまいました。

不思議に思い その尾を裂いてみると、尾の中に一本の神剣を見つけました。

その神剣を取ったスサノオは「これは私の物にしてはいけない。」と言い、自分の物にはしませんでした。

この神剣は後の草薙剣(くさなぎのつるぎ)であり、五世孫のアメノフキネによって高天原に献上されました。

また、スサノオはイタケルとともに天降ったときに、多くの木の種を持っていました。

この種は韓国には植えずに全て持ち帰り、九州から本州にかけて、日本の多くの土地に撒いてきました。

そのため、日本に青々としていない山は無いのです。なお、イタケルは紀伊国(きいのくに)に留まりました。

また、スサノオは「韓国(からくに)の島には金銀がある。子孫が治める国に船が無ければきっと困るだろう。」と言いました。

そして、自らの髭を抜くと杉が生まれ、胸毛を抜くと檜(ひのき)が生まれ、尻毛を抜くと柀(まき)が生まれ、眉毛を抜くと樟(くすのき)が生まれました。

スサノオは、その木々の用途を定め、こう言いました。

「杉と樟は船を造るのに使い、檜は宮殿を造るのに使い、柀は人々の棺桶を造るのに使いなさい。

その他、作物の成る種は よく蒔いて育てなさい。」

スサノオの子であるイタケルと妹のオオヤツヒメとツマツヒメは、スサノオの言うことを守り、木々の種を蒔いて廻りました。

スサノオはしばらく熊成峯(くまなりのみね)に留まった後、やがて根の国へと旅立ちました。

下記の動画から、「スサノオのヤマタノオロチ退治」を音声付で見ることができます。ぜひご覧ください。


備考


『日本書紀』には、本文異伝という形で複数のパターンの説話が記載されています。

上記は、異伝の流れを下敷きにしてまとめた「スサノオのヤマタノオロチ退治」ですが、スサノオが出雲に着く前に朝鮮半島の新羅を経由してきたという説話であり、一般的には知られていない内容となっています。

スサノオは、八坂神社などで牛頭天王(ごずてんのう)と同一の神として祀られていますが、牛頭天王の名は、新羅の牛頭山(ソシモリ山)に由来するとも云われています。

また、島根県の石見地方に伝わる民話の「乙子狭姫伝説(おとこさひめでんせつ)」の中には、主人公のオトコサヒメの母・オオゲツヒメが、曽茂利に住んでいる気性の荒い神様に殺されますが、日本神話の中でもスサノオがオオゲツヒメを斬っており、概ね この説話の内容と一致します。

そのため、スサノオは朝鮮半島に爪痕を残しているのかもしれません。