出雲国風土記・現代語訳:神魂命(かみむすひ)

神魂命(かみむすひのみこと)とは、『記紀』において天地開闢の際に現れたとされるカミムスビと同神とされ、「造化の三神」の一柱に数えられる天津神の中でも最も尊い別天津神(ことあまつかみ)とされています。

『古事記』によれば「因幡の白兎」の段でヤソガミに殺されたオオナムチの命を救うために使いを遣わし、「国造り」の段ではオオナムチ(大国主)の国造りに子のスクナヒコナを協力させたとされています。

『出雲国風土記』では多くの神の親神として描かれていますが、具体的に登場する説話は少ないです。


『出雲国風土記』による系譜


・支佐加比売命(ささかひめ):神魂命の子
・佐太大神(さだたのおおかみ):神魂命の孫
・八尋鉾長依日子命(やひろほこながよりひこ):神魂命の子
・宇武賀比売命(うむかひめ):神魂命の子
・枳佐加比売命(きさかひめ):神魂命の子
・天津枳値可美高日子命(あまつきちかみたかひこ):神魂命の子
・綾門比女命(あやとひめ):神魂命の子
・真玉着玉之邑日女(またまつくたまのむらひめ):神魂命の子

『出雲国風土記』による説話


・楯縫(たてぬい)は、天御鳥命が神魂命の宮殿の御装束としての楯を造り始めたことに由来する

『古事記』における神話


・天地開闢の際にタカミムスビに続いて現れたとされる
・高天原を追放されたスサノオにオオゲツヒメが殺された際、その死体から生じた五穀の種を回収した
・オオナムチが兄神らによって殺されたとき、その治療のために蚶貝姫と蛤貝姫を遣わせて蘇生させた
・子のスクナヒコナをオオクニヌシの国造りに協力させた(なお、カミムスビの子は1500座いるとされる)

『出雲国風土記』の該当箇所


[二] 島根郡の郷
[六] 島根郡の海岸地形 - 6
[一] 楯縫郡の総記
[二] 出雲郡の郷
[二] 神門郡の郷

備考


・『記紀』によれば性のない独神とされる
・アマテラスに協力的なタカミムスビとは対照的にオオクニヌシに協力的である
・『日本書紀』にはあまり登場せず、スクナヒコナの父もタカミムスビとなっている